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私たちのCSR

Opinion 長崎大学広報戦略本部教授・副本部長 深尾典男氏

2050年、日本国内のCO2排出量を現在から半減させるためには、持続可能性をキーワードとした都市基盤整備に、今すぐ着手しなければなりません。だからこそデベロッパーは、持続可能な社会の実現に向けた次のキープレーヤーなんです。

長崎大学広報戦略本部教授・副本部長 深尾典男氏

<深尾典男氏プロフィール>1960年生まれ。名古屋大学工学部原子核工学科卒業。83年4月に日経BP社入社。『日経ビジネス』記者、『日経ウエルネス』副編集長、『日経PC21』編集長、『日経エコロジー』編集長、日経BP環境経営フォーラム事務局長等を経て、現在、長崎大学広報戦略本部 教授・副元部長。

――深尾さんは、持続可能な社会の創造や環境経営等の分野で、最も知見を有したジャーナリストのお一人ですが、その深尾さんが最近、持続可能な社会の創造に向けたデベロッパーの重要性について盛んに言及されています。その理由からお聞かせ下さい。

環境政策の「優先順位」が問われる中、社会の変化に対応できる柔軟なインフラ整備が急務

深尾氏:地球温暖化防止の観点から言えば、CO2排出量の削減は急務な課題ですが、2050年にCO2排出量を半減する、あるいは80%減にするために、いま何をすべきか、その優先順位が当然問われてきます。特に長く使われるものほどライフサイクルでのCO2排出、環境負荷が大きくなりますから、それをいかに早い段階で削減していくかが最も重要ではないでしょうか。そういう意味で、最初に着手すべきは「インフラ」領域だと私は思っています。都市インフラは、1回つくるとそのまま長期間にわたって使い続けていかなければいけないものですから。
 ここで考慮すべき点は、建物で言うと「スケルトン・インフィル」のような考え方です。構造物(スケルトン)は長持ちするようにつくり、内装や設備(インフィル)部分は時代によって替えていくことが可能といった、時代に柔軟に適応できる発想が必要だと思います。柔軟な思考、柔軟なインフラと考えてもいいと思いますが、硬直したインフラだと、現在つくられているものが結果的には環境負荷の高いものになってしまう可能性があります。
 つまり、いまできる最新の技術で最新の省エネ、最新の環境性能を実現するだけでは不十分であって、柔軟なインフラへの対応をも想定すべきなのです。その意味で、インフラ整備にかかわる人たちは社会に対する先見性を常に考えておくべきだと思うのです。例えば交通移動体系の未来を考える際に、電気自動車が主流になっていくのか、水素が主流になっていくのか、それとも20年、30年とガソリンが続くのか。それらを考えたときにインフラ整備の方向性は当然変わりますよね。電気が主流になっていくとすると、例えば車への給電システムがどうなっていくかといったことを柔軟な発想を持ってアプローチしていかなければならないと考えています。

――デベロッパーの役割や責務も、これまでとは異なり変化するとお考えですか。

「街が歳をとっていく」都市開発からの転換を

深尾氏:すでに日本の都市人口は60%を超えています。その意味で、都市の持続可能性を高めることは、環境という観点からも不可欠な視点ですが、現実にはなかなか難しいというところがありますね。
 例えば、高度経済成長期に計画されたニュータウンですが、なぜニュータウンが衰退したかというと、住んでいる人が歳をとっていくと同時に「街も歳をとっていく」からなのです。それは、そうさせないためにはどんな循環が必要か、新しい人たちを呼び込むための工夫はどうすべきか、そういった地域の長期的な「経営展望」が欠落していたからです。
 これまでは、都市の柔軟な進化という観点があまり問われなかった。「進化」というと新しい技術を導入したり、常に先端を追い求めるという印象を与えがちですが、必ずしもそれだけではありません。むしろ「時代に合う」「時代に適応する」といった、常に変化に対応できる能力を持つことがもう一つの側面であり、持続可能な都市の創造には不可欠な視点の一つだと私は思っています。

――深尾さんが北九州市の八幡東田総合開発に注目している理由はその点にあるわけですね。

長崎大学広報戦略本部教授・副本部長 深尾典男氏

八幡東田総合開発は、ハードとソフト、双方の進化を街づくりの両輪と捉えている

深尾氏:新日鉄都市開発が推進している八幡東田総合開発に注目しているのは、まさに「柔軟な進化」というコンセプトが体現されている点です。街づくり自体が一定のところで固定化され、現在の最先端の、でも硬直的な街をつくり上げるということではなく、街の環境や人の動き、産業の発展や商業施設の展開、九州の産業構造の変化など、街の全体像を睨みながら常に時代に適応し、それが進化の原動力となっている、そういう柔軟性を八幡東田総合開発は持ち合わせているからです。
 環境問題はこれから温暖化問題だけではなく、さらに多様で複雑な課題が出てくると思います。現在の環境問題にのみ焦点を当てるだけでは、将来新たに生じる問題に対してスムーズにアプローチできません。そういう意味で都市自体が柔軟に対応できる、それも構造物だけではなく、街のソフトも含めて全体をつくり上げていく考え方、それがあって初めて未来の環境問題にも対応できると私は思っています。だから私は、現在のみならず、未来に対しても八幡東田総合開発に可能性を感じているのです。

――街のソフトとは、例えば人のつながりや街づくりへの参画意識などを指すのでしょうか。

これからの都市開発には、コミュニケーションがデザインできるデベロッパーが求められる

深尾氏:新日鉄都市開発は、八幡東田総合開発を推進する中で、産官学民の連携を実際にプロデュースし、その運営にも携わっています。多様なステークホルダーを実際につなぎながら、開発業務に当たっているわけで、このような積み重ねが、街に柔軟性や慣用性を浸透・定着させているのだと思います。新しい文化を積極的に受け入れるという北九州市の地域性も当然考慮すべきでしょうが、新日鉄都市開発の街づくりへの姿勢がなければ、できなかったことも多かったのではないでしょうか。
 日本の都市開発を振り返ると、コミュニケーションができない人たちが街づくりを推進していたから都市はうまくデザインされなかったのかな、と思うことが多々あります。しかし、どのような事業であっても、コミュニケーションのないところには満足はありませんし、その意味でコミュニケーションをデザインする能力は都市開発を担うデベロッパーにこそ問われているのではないでしょうか。
 CSRの領域では、すでに「ステークホルダー・エンゲージメント」という概念が登場し、多様なステークホルダーとの対話と交流こそCSRの出発点であるという考え方が今後さらに重要視されると思います。だからこそ、都市開発とCSRは同じベクトルで未来に向かうべきなのだと思います。
 新日鉄都市開発には、未来に向けた持続可能な街づくりに今後とも積極的にアプローチしていただきたいと思います。

――ありがとうございました。