ものづくりの心

Vol.4わずかでも手間を惜しめば、必ず結果に表れます

Vol.4わずかでも手間を惜しめば、必ず結果に表れます

唐棧織 

齊藤裕司さん

日本で唯一、千葉・館山にのみ残る伝統的な唐棧織(とうざんおり)。4代目としてそれを守るのが齊藤裕司さんです。曽祖父の代と全く変わらずに、自然素材の染料を使い、研ぎ澄ませた五感のすべてを働かせて、糸をつくり、染め、織り上げます。最上の結果を目指すためには決して手間ひまを惜しまぬ、そのものづくりへの思いをうかがいました。

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五感が伝統を守り新たな色を生み出す

唐棧織とは、細かい縦縞を織り出した木綿の織物です。原産地はインドで、日本へは16世紀の安土桃山時代にオランダ船でもたらされたといわれます。当時、日本にはまだ縞という柄がなかったため、「唐棧こそが縞」だったわけです。江戸時代になると、その渋い粋が愛されて唐棧織は大流行しました。特に、贅沢を戒める天保の改革により、庶民が絹織物を着ることが禁じられた時代には、絹に代わる織物としていよいよもてはやされたといいます。

私の曽祖父は明治維新後、職を失った武士などに技術を教える授産所で唐棧織を学びました。その後、体が弱かったため、東京・新橋から、妻の故郷である気候の温暖な千葉・館山へと移りました。館山は当時、険しい鋸山を隔てた“陸の孤島”。新しい技術や素材が届かなかったことと、曽祖父の職人気質によって昔ながらの唐棧織が守られてきたのです。一方、かつて唐棧織の産地の中心であった埼玉・川越では、その逆のことが起こりました。川による物流が盛んだったため、化学染料や機械が導入されて自然素材の染料や手機がすたれ、唐棧織も伝統を離れて簡易なものになってしまったのです。

 こうして唐棧織は、今では日本で唯一、館山の齊藤家のみに残る伝統的な工芸となりました。その特徴は、まず植物や虫など自然素材の染料で糸を染めることです。用いる自然素材は唐棧織の基本である藍をはじめ、ヤマモモの木の皮、榛の木の実、ヤシの一種のビンロウジュ、アブラムシの一種が木の葉につけた傷がこぶとなったものである五倍子(「きぶし」とも)、カイガラムシなど。400年前から伝わる素材を使い、濃淡によって約300色を生み出します。

こうした自然素材で作る染液の色を確かめるのは自分自身の舌。パーセンテージで濃度を決める化学染料と違い、染液を自分の舌でなめ、含まれるタンニンの渋みによって微妙な色の濃度を探ります。私はもともとお酒は飲みませんが、舌の感覚を研ぎ澄ませるためにタバコは吸わず、染めの一週間前からは香辛料など刺激物も摂りません。風邪も引かないように注意します。それ以外にも、五感による微妙な感覚は大切です。例えば、染液を糸に揉み込むときもゴム手袋は着けず、素手で。これも曽祖父の時代と変わらない唐棧織への向き合い方です。