
Vol.1「普通」から外してみる勇気

流石創造集団株式会社 代表取締役CEO
黒﨑輝男さん
「IDEE」のトップとして、日本にライフスタイル・デザインという新たな概念をもたらし、現在、流石創造集団株式会社を率いる黒﨑輝男さん。国内外のデザイナーのプロデュースを数多く手掛け、廃校となった公立中学校を若手クリエーターが集結する新たなコミュニティとして再生させた「世田谷ものづくり学校(IID)」の仕掛け人としても知られる。
クリエーティブであること
ものづくりとは何かを考えたとき、これまでのように、より多く生産すること自体がものづくりではなくなってきていると思います。企業は大きくならなければいけない、という宿命のようなものがありました。人間ならある時期が来たら成長が止まるのに、それを筋肉増強剤で無理やり伸ばそうとしているようなものです。そうしないと株主が満足してくれない。だから量的に成長していくことが何より大事だ──というのが、現在の日本社会の状況でしょう。そこに無理があるんですね。
“ものづくり”とはクリエートすることですから、ただ生産するということではなく、プロダクトとともにシステムをつくり上げる、コミュニケーションを構築する──これらを組み合せて質的に良くなっていく。これからの成熟した社会では、この“クリエーティブである”ことがとても大切だと考えています。
例えば、いま困難な状況にあるとしたら、それをどんな視点で乗り越えるか。ひたすら生産して売上を増やそうというのには根本的に無理があります。それなら売上に代わる循環を考えなければいけないと思います。
“固く、安全な”日本企業
日本の企業では若者たちが何か良いことをやろうとしても会議でつぶされてしまう、なんていう事例が数多くありますね。どんどんつまらないものになって、や
らない方がましだみたいなことになる。その結果、日本は負けてしまうわけです。
一番の原因は、先ほど述べた会社を大きくしなければいけないという強迫観念に似たものの存在でしょう。それで固く、安全に、となる。会社を守るため、社員 を守るため、家族を守るため、と。結果として、守ることになっていないわけです。それは本当の意味のクリエーティブなのか?──という点を考えなければい けないのだけど、それを若者たちにだれも教えていない。
「世田谷ものづくり学校」は、廃校になった中学校を区から譲り受け、“Re-Think”“Re-Create”などをテーマに若者たちが中心になって全 面改装しました。鍵もなく、自由に使えるスタイルにした。すると、いろいろな人たちが集まってくる。“学校”といわれているけれども、隣ではある有名企業 の世界戦略が練られていたり、だれもが知る広告が作られていたりする。そういう人たちは少し前なら六本木あたりの超高層ビルにオフィスを構えたのでしょう けど、あえてここに来るわけです。こういうところの方がかえって面白いものが生まれる、そういうクリエーティブのための場になったのです。