社長コラム

Vol.5 『景観の日』によせて (2006.06)  

今回は、前号の㈱日本設計・伊丹会長との対談に触発されて、少し真面目なお話を書かせていただこうと思う。日本の都市景観が無秩序である点を問題視されはじめて久しい。今年から6月1日が『景観の日』と定められた。昨年同日に施行された、景観法の基本理念の普及や良好な景観形成に対する国民の意識啓発を目的とした取り組みの1つである。「美しく風格ある景観は、私たちの心の有り様と深く結びついている」という国交省のキャンペーンメッセージを待つまでもなく、全国のいくつかの都市・地域で、その土地固有の歴史・文化・自然を生かした街づくりの動きが活発化している。 今その都市景観について岐路にある東京都でも、今年に入って注目すべき2つの動きがあった。「水辺空間の魅力向上に関する全体構想」と「眺望の保全に関する景観誘導指針」の策定がそれである。前者の「水の復権」とも言うべき取り組みは、近代都市の住民であっても人工的な環境だけでなく、美しい自然との触れあいを日々の生活の中に求めているということ――「人為と自然との共生」というテーマであろう。後者の「眺望の保全」は、国会議事堂や神宮外苑絵画館等わが国の近代化の過程で首都東京のシンボルとして造られた建築物とその周辺を風格ある景観として残していこうということ――「歴史と現代の共生」というテーマになろう。

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ここで、この2つのテーマについてもう少し深く考えてみると、そこに共通するものがあるように思われる。それはいずれも、建物や橋という単体の魅力や1つの建造物の保全にとどまるのではなく、それらの周辺の広がりある地域全体を取り組みの対象に取り込んでとらえていることである。当社の事業活動の『志』に結びつけて言えば「“エリア価値”の再認識・再構築」ということができよう。その活動の座標軸としては、エリアにおける周辺や背景との調和(例えば、色彩・デザイン・スカイラインなど)が横軸なら、縦軸はその土地の持つ歴史の尊重と景観の持続性への配慮(東京なら江戸の町並み再現やウォーターフロントの整備など)ということになろうか。 それでは、そうした事業に取り組んでいく企業(人)として私たちが最も大切にすべきものは何か。それは建築に関する技術力とか都市計画に関する法律・制度の知識であろうか、あるいは海外の都市問題についての知見であろうか…。私には、そうしたものは事業者や専門家としての必要条件ではあるが、それだけでは何かが欠けているという思いがずっとしていた。ところが、先般の伊丹会長のお話や、直近の日本橋再生にかかわっておられる地元の商業者の方々の活動に触れる中で、それが「地域に対する愛着」であり、事業者として「地域の思いを汲むこと」であると気づかせていただいた。三井不動産殿の日本橋プロジェクトのコンセプトは「残しながら、蘇らせながら、創っていく」であると聞く。当社もこれまで社有地開発であれ住宅分譲であれ、単なるフロービジネスではなく、社会への良質なストック形成に貢献することの自覚と誇りを持って事業に取り組んできたと自負しているが、改めて肝に銘じておきたい切り口である。 ところで、これは何も日本橋だけの話ではない。私たちが日ごろ仕事で対象としているエリアでも、そして私たち自身の住んでいる地域でも、住民の土地への愛着心、その土地が持つ歴史や自然をどのように街づくりの中に残していくか、造りこんでいくかは、今日的な問題として問われているはずである。今一度私たち一人ひとりが、日ごろの業務を通じて得た自らの経験や知識が地域の街づくりのお役に立たないかと考え行動し、またそうした地域社会での活動から会社の仕事への刺激・フィードバックになることが見つけ出せるなら、“街づくり”を生業とすることの喜びと生き甲斐をより確かなものにできるのではないだろうか。『景観の日』によせて、皆さんの“街づくり”への思いをちょっと振り返ってみられたら、新しい気づきに出会えるかもしれませんよ!

社長・社員コラム

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