社長コラム

Vol.23 今年の「読書録」 (2011.11)

わが生れ故郷、山陰地方を記録的な豪雪が襲った年明け1月4日、下旬には昨年の口蹄疫騒動に続き宮崎県で鳥インフルエンザ感染が発生、追い討ちをかけるように鹿児島県との県境の新燃岳が189年ぶりに大噴火と、つらい自然災害がたて続いた新春の1カ月。とどめを刺したのが3月11日の東日本大震災と大津波。その被災地は夏以降無常にも台風・豪雨災害に何回か見舞われた。今年の日本は、荒れる自然の猛威に晒され続けている。この苛烈さと、一方で美しさ・豊かさを併せ持つ日本の自然に対して、私たち日本人がもっと謙虚に向き合い、もっと真摯に過去の災禍に学んでいれば、福島第一原発があのような災いをもたらすことはなかったのではと、あらためて痛切に思う。

そして、早いもので秋が来た。9月12日、その日残暑は厳しかったが『中秋の名月』は殊のほか美しかった。澄み切った初秋の空がスカイブルーからダークブルーに暮れなずんでいくにつれ、冴え冴えと輝く十五夜の満月の美しさに、わが国固有の四季の移ろいへの感謝と畏敬の念を思わず感じ、こうした自然と対峙し共生していくことこそが、今を生きている私たち日本人の宿命であり責任であると、思いを新たにした。

 ところで、私の手元にある10数冊の手帳には、巻末のメモスペースに「読書録」と「ゴルフ録」が、今や書くのも見るのも老眼鏡が欠かせなくなった細かな字で残っている。いつのころからか、心と身体の老化防止のささやかな自助努力の証として記し始めた。自分的には、毎年「読書録」(冊数)>「ゴルフ録」(回数)と読書が常に先行するように心掛けてはきた(実績は不問?)。今年は、年初から厳冬であり、そして大震災が起こり、夏には節電が強いられたこともあって、例年に比べアフター5と休日に自由になる時間が相応に持てたこと、さらには9月には人生初体験の入院生活を10日余り余儀なくされたことなど、今のところ「読書録」の方が断然先走っている。元来が“積ん読派&乱読派”であって、高尚な読後感は語るべきもないが、やはり書物に触れる機会が増えれば思わぬ良書に出会うことも多くなるわけで、“生きること、人とのかかわりの中で生かされていること”を考え続けてきた大震災からの日々を振り返りながら、ここまでの今年の「読書録」をホンの少しひも解いてみたい。

1月1日『古代ローマ人の24時間』(A・アンジェラ著)。五賢帝の一人トラヤヌス帝治世下のローマ社会の一日、とある火曜日の日の出前から夜中までを時間を追って再現している。もちろん史実を基にしたフィクションであるが、例えばなぜ誰が奴隷と分かるのか、奴隷は逃亡しないのか?どうしてローマ人はいつも公衆浴場にいるのか?塩野七生の『ローマ人の物語』(今回の入院中に文庫版最後の41~43巻を読了)を読みながら、疑問もあった古代ローマの都市生活が臨場感豊かに伝わってくる快著!

5月9日『三陸海岸大津波』(吉村昭著)。震災後4月中はさすがに読書意欲も萎えていた。再開直後厳粛に読んだのが本書。明治29年、昭和8年・35年に三陸地域を襲った3回の大津波・地震によって何が起こっていたのか?克明な調査に基づく淡々とした記述が、当時の惨状を読む者に重く伝える。被災を目の当たりにして、“想定外”と言い募った有識者たちは、著者に何と答えるのか?同著者による『関東大震災』(6月15日読了)とともに過去の事実に学ぶ大切さを痛感させられる。そして原発問題に関しては、『福島原発メルトタウン』(広瀬隆著)、『原発のウソ』(小出裕章著)を6月一気に読む。反・脱原発の立場に立つ2人の筆致に迎合的にならぬよう精読したが、門外漢には不知の現実も知ったし、やはり原発災害の人為性については、厳しく問い質されねばならないと思った。

8月8日『戦前昭和の社会』(井上寿一著)。日本の今が、“豊かさの中の停滞”とすれば、かつては”貧しさの中での停滞”、そんな時代にありながら不思議に明るい日常生活が行き生きと描かれている。1年ほど前に読んだ『逝きし世の面影』(渡辺京二著)でも、幕末から明治を生きた日本人が自然に身に付けていた美徳や、共助の暮らしぶりに触れ、誇るべき日本の過去の姿に魅き込まれて読んでいた記憶がある。このように日本の歴史を概観すれば、そして今も被災地で助け合う人々とその被災者に心を寄せる人々の存在を知れば、私たちは素晴らしい国に生きていることに気付かねばならないし、この国を次世代につなぐ役割を肝に銘じなければならないと思う。

多くの日本人の心に残るであろうこの一年もあと2カ月、晩秋を迎えればここからの年の瀬への歩みは早い。会社の仕事も、上期が終わると下期はアッという間に過ぎていく。世の中の厳しく慌ただしい動きに惑わされることなく、足下は慎重に、向かう将来には勇気と希望を持って、皆で知恵と力を合わせ支えあい頑張っていきたいものだ。

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Soft Eyes 〜社長随想〜