社長コラム

Vol.15 『4年目の夏』雑感 (2009.08)

 

拙稿「ソフト・アイズ」も今回で15稿となった。第1稿が平成17年6月だから4年目の夏を迎えることになる。毎回原稿締切り間近に、アブラ汗を流しながら何とか書き続けてきた。社長就任時に、編集長女史から「社長はまだ顔が売れてないから、リビオ巻頭に1頁差し上げますので何か書いて下さい」という温かいお言葉(?)をいただいて、苦労は目に見えていたが貴重な情報発信のツールと思い精一杯書いてきたつもりだ。この間、とある会合の場などで、唐突に大先輩・知人から「まあまあのこと書いてるな」「あんなもんじゃない」と、声を掛けられビックリしたことも何度かあるが、そんな時にはあらためてプレッシャーも感じる一方、書いていて良かったと思ったりもする。ところで今日も締切り3日前…、何を書いたものか悩ましい。

私事はさておき、つい先日の新聞によれば、本年上半期の首都圏マンション供給戸数は1万5千898戸と、上半期としてはバブル崩壊後の1992年以来の低水準になったとのこと。通年見通しも4万戸台半ばから3万5千戸と大幅な下方修正を報じている。小生は年初より、大方の予測よりはるかに厳しい事業環境を覚悟して仕事に臨んできたが、巷間言われている実体経済全体の底打ち感のある動きとは異なり、当業界の事業運営の厳しさは変わらず、先行きの確たる好転材料もなかなか見当たらない。こういう時は、“起きている事実をキチンと把握し整理して、それに基づき皆の知恵・工夫を出しあい、仮説を立て期間を決めて検証する”、そんな愚直で地道な取り組みを繰り返し積み上げていくしかないと考えている。当社の将来、皆の志・夢を描いた「私たちの進む道」の実現に向けても、今は我慢、我慢…。足下をシッカリと見つめてやっていきたいものだ。

 ところで、“足下シッカリ”と言えば、わが日本国の政治は見るに耐えない迷走状態にある。逆風に晒された首相の、過去に例のない衆議院の解散予告と、それに対峙する議員先生方のさまざまの不可思議な行動を毎日見せつけられる現実に、政治家を名乗る方々の自己保身ばかりが垣間見えるようで、多くの国民はしらけている。4年前の郵政総選挙での与党側のバブル的圧勝とその2年後の参院選での野党側の地滑り的大勝という経過を経て、特に与党サイドで総理・総裁の選択基準が「国政選挙に勝てるか否か」に拠ってきてしまった結果、課題だらけの将来の国づくりに対するビジョンや政策を十分に提示できない、現下の国民の政治不信に何らの建設的な取り組みも示し得ないだけでなく、増幅させるばかりの日々のドタバタ劇を目の当たりにして悲しい気分になる。本稿が皆さんの目に触れるころ、政治の世界に何が起きているか。「政界は一寸先は闇」とはよく言われることだが、今回ばかりは当の政治家先生方も皆目先が見えていないのではなかろうか…。(注:脱稿の日、衆議院は解散され8月30日投開票で総選挙実施が決まった。貴重な1票に思いを託したい。)

そんな政局とは対照的に、経済界では久々に注目すべきビッグニュースが報じられた。国内食品最大手のキリンホールディングスと2位のサントリーホールディングスが経営統合するということだ。40年前の新日鉄合併に比肩される、否、世界市場での業界インパクトとしてはおそらくそれ以上の大統合であり、世界屈指の規模を誇る飲料メーカーが日本に誕生することになる。本件がとりわけ小生の心に響くのは、両社は共に現に勝ち組でありながら、将来の国内外市場の動向を見据え、業界の雄たる企業と同族経営の成功企業が、多くの壁を乗り越え攻めの再編に挑戦しようとしている点だ。そこには両社経営トップの、現状に安住せず世界を舞台にする成長を強く意識した健全な危機感と卓越した先見性、果断な決断力が感じられ、小生も経営者の端くれとして大いに勇気付けられる。

国民と消費者をそれぞれ自らの仕事のお客さまと捉えたときに、政治と経済の世界で起きているこの2つの出来事の見え方は、私たちがお客さまとの関係について持たねばならない当事者意識・問題認識の有り様において対極にあるように感じられ、考えさせられる。

さて、何とか15稿目を書き終えようとしている小生に嬉しい知らせが…。扶桑社殿が企画しておられる日本的経営の強みを見直そうという趣旨の新刊本に、「進む道」や社員総会、地域貢献活動を題材にして社員の皆さんの取り組みを取り上げ、当社が紹介されるとのことだ。出版は8月末予定。最終稿を手元に一息ついて、皆さんと一緒に「進む道」の実現を目指して働くことのできる巡り合わせに感謝しながら、決意を新たにしている小生である。

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Soft Eyes 〜社長随想〜